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エマニュエル・トッド理論から読む、世界のこれから。2023年、中国が滅びる!?

習近平後のシナリオを予測する

■家族理論からみると正しい習近平の独裁体制強化

 この過程を中国に当てはめると、習近平が独裁体制を強めていることは、外婚制共同体家族の社会の原理から行くと「正しい」ことなのですね。もっともっと強烈な独裁者にならなければいけない、ということにさえなる。民主化などもってのほかなのです。

 では、習近平体制が確立すれば、習近平が生きている限り、中国の未来は保証されているかといえば、そうはいかない。

 というのも、中国は日本以上に人口減少という問題を抱えているからです。人口学的見地からすると、人口が減少に向かった国に未来はないというのが真実です。中国は、近い将来、急激な人口の老齢化を迎え、死亡率は上がります。社会保障をしないできていますから、貧しい老人に一気にしわ寄せがいきます。

 しかも、一人っ子政策のせいで、若年人口は少なくなっています。若年人口が少ないのは、なにも一人っ子政策のせいだけではありません。現在の中国の家族形態は都市部ではかなり核家族化しています。国家形態は外婚制共同体家族ですが、実際の家族は、日本以上に核家族化しています。外婚制共同体家族は、近代化したあとには必ずそうなるのです。外婚制共同体家族は、核家族化すると、これまで負荷が強くかかってきたお嫁さんのセックス拒否権発動が強くなり、少子化に向かうのです。

 また、中国では、急激な近代化による環境汚染がひどく、人の住める地域がどんどん少なくなっているということも大きな問題です。

■習近平後のシナリオを予測する

 ソ連の場合は、国家の成立が1917年、崩壊したのが1991年でした。80年もたなかったのです。いまの中国は1949年成立ですから、ソ連に重ねるなら、2023年、あるいはさらに早く賞味期限が切れてしまうかもしれません。たぶん、習近平の死がそのきっかけになるでしょう。

 では、避けられそうにないこの中国崩壊は、日本にとって対岸の火事なのでしょうか。

 それは日本自身の死活問題となってきます。

 日本はいま、農産物、工業原料、衣類、パソコンから労働力まで、全般的に中国に頼っています。中国が崩壊すると日本人は間違いなく飢え、仕事にも支障をきたします。

 中国の歴史をみると、中央権力が崩壊したあとは、必ず軍閥政治になっています。軍閥が割拠して内戦になる可能性があります。核を持ったままの内戦ですから、非常に危険です。むろん、難民も発生します。

 このような状況になることを日本は全力で食い止めなければなりません。中国共産党を強く支援して、国家の崩壊を防がねばならないのです。安倍首相をはじめとして、日本の右派の人たちは、中国の崩壊を内心期待しているようですが、ここはマキャベリズムをはたらかせて、中国共産党を全面支持するのが得策です。

(『エマニュエル•トッドで紐解く世界史の深層』より構成)

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鹿島 茂

かしま しげる

鹿島 茂(かしま•しげる)



1949年生。仏文学者。明治大学教授。専門は19世紀フランス文学。『職業別パリ風俗』で読売文学賞評論・伝記賞を受賞するなど数多くの受賞歴がある。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMAimagesSTUDIO」を開設。新刊に『神田神保町書肆街考』(筑摩書房)、『太陽王ルイ14世ヴェルサイユの発明者』(KADOKAWA)がある。Twitter アカウント:@_kashimashigeru


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